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クリスマス [物語]

空を見上げてため息をつく。
七色は今にも降り出しそうな空があまり好きではない。
いっそのこと降ればいいのに。
そんな風に思いながら数日先のクリスマスのことを考える。
クリスマスというイベントを知ったのは数年前。
よく行く喫茶店のマスターから何処かの国の聖人が産まれた日だと教えてもらった。
何処の国の話かは聞いてない。聞いたところでわからない。沢山の国は三百年ほど前に無くなってしまったから。
戦争というものがあったらしいとは聞いている。けれど本当はどうなったかというのは大人になってから教えられる。一部の人間だけに。
七色は自分が知ることはないだろうと思っている。

今この町はドームの中にある。外はどうなのか知らない。空がどんなものかも本当は知らないのだ。よく出来たドームで天候も変わるし不自由はない。天井はあることがわからないような技術でつくられている。だからドームであることを知らない人も実はいるくらい。情報は少なく、人の生活はアナログだ。技術は大きなものにだけ優れて、人の末端の生活にはあまり優れたものはない。それがこの世界を保つ秘訣なのかもしれない。
七色は親と一緒に住んでいるが、本当の親なのかもわからない。こどもは結婚した数年後に支給されるから。それが普通だと思っている。
今日は数日後のクリスマスに両親に何かプレゼントしたいと悩んでいるのだ。
七色は14才。来年には親元を離れなければいけない年になる。
クリスマスなんて七色と喫茶店のマスターくらいしか知らないんじゃないだろうか?
だから何をしたらいいのかなんて、本当はわからない。わからないだらけで七色の頭はパンクしそう。何をあげればいいのか、それを考えて空を見上げてため息をついたのだ。


タグ:物語
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