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星捕り 1 [雑文 つぶやき]

「ケイタ、星を捕りに行こう」
ユウタは僕の耳元で囁いた。
木枯らしの吹くある日、ユウタは僕にそういった。
僕は本気にしていなかったが、ユウタは本気だったんだ。
「え?」
僕が聞き返す前にユウタは消えた。ランドセルをガタガタといわせながらユウタの走り去る姿が遠くなっていく。
僕は追いかけることもせず、いつもと同じ様に家へと帰った。

僕の家はこの町の外れにある。学校からは30分程、山の麓の洋館だ。
僕がこの家を選んだわけじゃない。祖父が気に入ってこの洋館を買って直したのが40年ほど前。設備は古くなっているし、外観もかなりきている。お化け屋敷って言われれも仕方ないかも。
だから僕の家には友達は来ない。ユウタを除いて。
ユウタはこの近くのアパートに住んでいる。両親と2人の兄、妹の6人家族。僕は一人っ子で祖母、父、母と4人暮らしだからちょっと羨ましい。
毎日とてもうるさいそうだ。『ゆっくり宿題もできないんだぜ』そういって僕の家に宿題を持って来て一緒にするのが日課に近い。
僕も一緒にできるのはうれしいし、なによりにぎやかになるのが楽しい。普段の僕の家には両親がいない。両親は海外で仕事をしているから祖母と二人っきり。そんな静かな所にユウタがくるとにぎやかになる。祖母も嬉しそうにあれこれと世話を焼いてくれる。
宿題を終わらせておやつを食べて、晴れれば外で遊ぶし、雨なら本を読む。
祖父の書斎は図書館ようになっていて僕たちは色んな本を引っ張り出して手当たり次第に見てみる。文字通り見るんだ。読める漢字もあるけど、まだまだ読めない方が多いから。それでも星座だったり動物、植物の本。いろいろあって飽きない。
そんな中にその本はあった。
この町の歴史なんかの本だったと思うけれど、そこに星を捕る人が載っていた。ユウタはそれに夢中になっていたんだ。


続く
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