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闇蛍 [詩など]

蛍が飛びはじめるのか?ほたるぶくろの花がついた。
私は一つ手折るとくらい川へ向かう。
蛙の鳴き声がして螻の声もする。
風に甘い香が混ざり、初夏の夜風が頬を撫でる。
つうっと小さな光が目の前を横切り咄嗟に手を出した。
蛍とおぼしきものを捕まえようとした。
けれどそれは指先をすり抜け闇の中へと姿を消して行く。
捕まえられないことに苛立ちむきになって追いかけた。
闇の中に光る球。これが本当に蛍なのかもわからないままに。
足元も闇、後ろも、横も。前にある仄かな光だけ。
気がつけばどこにいるのか分からない。自分の後ろでガサガサと追いかける音がする。
逃げなければ、なにから?音から?
光はどこだ?
今は何時だ?
私はどこだ?私は誰だ?
『早すぎる蛍は追いかけたらだめだよ。あれは若い魂さ。悪戯ずきで闇に捕われるよ。』
誰かが言っていた。そうこれは蛍ではない。捕われた私の魂。そして後ろの音も私。
永遠の闇に捕われた、わたしたちの魂。
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