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クリスマス2 [物語]

喫茶店に飛び込んだ。マスターがコーヒーをいれている。コーヒーのような嗜好品も限られている。なのにこの喫茶店は切らしたことがない。それも謎の一つかも知れない。
とりあず椅子に座りコーヒーを頼む。外を眺めてため息をまたつくとマスターが聞いてきた。
どうした?雪が嫌か。
違う。クリスマスに何をプレゼントするかで悩んでる。来年はもう私はいないからね。あの両親のところには。
七色が答える。
そうか、もうお前も15になるのか。
感慨深そうにマスターは話す。
コーヒーを飲みながら七色はマスターを眺める。年齢不詳なマスターは名前も知らない。ただずっとここにいる。そして怪しげな物品を何処からか調達して来る。
お客もいるようには思えない。そもそもこの町では仕事が決まっているし休みなんてほとんどないから。なんだか灰色な町。
色が少ない。七色はマフラーを外した。あまり見かけない色が沢山使われたカラフルなものだ。母親が数年前にくれた。
色をあげたい。
ボソッとつぶやいたところ、マスターが動いた。
コトリ。小さな透明な石を七色の前に置いた。
こんなのはどうだ?
石は光をうけて虹をつくりだした。初めてみたその石に七色はくぎづけになった。
この光は虹っていうんだ。お前の名前のように七色ある。
マスター、これ欲しい。マフラーと同じ色だよ。
マスターがニヤリと笑う。
簡単にはやれん。お前が親元を出たら俺のところにくるなら、これをやろう。
マスターのところに?
そうだ。俺は来年になったらここを去る。その時について来るなら。
いいよ。
七色は即答した。どうせ来年親元を出たら何処かに勤めることになる。それはお役所が決める。そして面白くもない生活を強いられるなら、マスターと何処かへ行ってもいいだろう。それが禁止されていることだとしても。
ならもっていけ。クリスタルってもんだ。
ありがとう。マスター。
七色はクリスタルを掴むと駆け出した。
これをプレゼントしよう。自分が居なくなっても寂しくないように。
そして別れる両親に伝えよう。幸せだったこと。ありがとうと。
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